about

焼け残った記憶を拾い、花を手向け弔う。その過程で生まれでたある一つの結論、ある一つの完成のかたちが、絵画だったり、物語だったりする。2017.12.18 マツウラミオ

006

遠鳴り

明け方、プロパンガスの業者がボンベの交換にやってくる。子どもひとりぶんの大きさはある円筒形の鉄のぶつかる音は、まだ日の登らない薄暗がりにひたされた住宅の一帯にカオオンコオオンとけたたましく鳴り渡る。この耳障りな音のせいで予定よりもずいぶんと早くに目が醒めてしまうので、業者にクレームを入れようかとしばらく考えていたのだが、夢とも区別のつかないうつろな意識に―――絵画から声や温度を感じたりするように―――どこか暗い場所で啼く何ものかの像が映りこむのを見てしだいにその気は失せた。毎度不明のものの正体を暴けぬうちに再び眠りへと落ちていくこのひと時を存外嫌うようなことはなかったのだが、近所の誰かが文句を言ったのか、音はこのごろ聞こえない。