about

焼け残った記憶を拾い、花を手向け弔う。その過程で生まれでたある一つの結論、ある一つの完成のかたちが、絵画だったり、物語だったりする。2017.12.18 マツウラミオ

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小さい世界-水槽-

次いでアクアリウムショップへ入った。こちらも盆栽屋と同様小さな店舗で、店先には観賞用の流木や石がコンテナに山積みされている。これらの素材が組み合わされ、世界が一つ簡単に出来上がる。

元上司の目当ては水草で、彼は静物だけの簡素な水槽を前に、酸素ポンプから噴く気泡が生む僅かな水の動きに揺蕩う新緑色の葉に見入っていた。熱帯魚を飼っていた時、掃除の際に上蓋をのけていると知らぬ間に床へ一匹転落していたことがある。幸いすぐに気づいて水へ戻したが、飛び出た当人にも何が起きたのかわからぬままなすすべなく体の表面が乾いて死にゆくのを待つよりほかない悲劇に衝撃を受けた。山で足を滑らせるように、一線を越えれば退路がなく、またつくった者の粗がきっかけで呆気なく何かが事切れてしまう惨事はどの世界でも平等に起こり、そのいずれの事態も、つくった者が阻止できるとは限らない。