about

焼け残った記憶を拾い、花を手向け弔う。その過程で生まれでたある一つの結論、ある一つの完成のかたちが、絵画だったり、物語だったりする。2017.12.18 マツウラミオ

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フェイクファー

艶のある黒猫のようだった。ところどころ青が差した非現実的な毛色ながら、そのような生き物が本当にくるりと女の首にまとわりついているような艶かしさがあった。生き物に擬えた“つくりもの”から感じられる妙な生っぽさが、質感によるものなのか唐突に使われた青色によるものなのかはわからなかった。青に魅せられたイヴ・クラインが生涯青い絵ばかり描いたこと、ヨハネス・フェルメールがウルトラマリンの顔料に生活の困窮を顧みず金をつぎ込んだことが、ファーを纏う年増の女が視界から消えるまでの間に過(よ)ぎった。