about

焼け残った記憶を拾い、花を手向け弔う。その過程で生まれでたある一つの結論、ある一つの完成のかたちが、絵画だったり、物語だったりする。2017.12.18 マツウラミオ

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プードルの容(かたち)

正面からやって来た犬はどこか違和感があり、リードを引く女やその脇を抜ける自転車や川沿いの柳並木との比較によって遠目にも感じ取れた不自然さはいっそう増した。脚の一部と臀部の毛を刈り取り、残した長毛に丸みを持たせてカットするコンチネンタルクリップカットで、プードルにはよく見られるスタイルだが、この犬は当のカットで想像しうる犬のサイズより、ずっと大きい。背骨の稜線は犬を連れた女の膝の位置よりも高く、前脚から尻にかけては凡そ女の身長の半分はある。そのうえこのカットには似つかわしくない、梳(くしけず)った黒髪のように艶やかな毛を垂らしている。巻き毛の犬のようなボリュームはないが空気を含んだような膨らみがあり、毛のほぼ完全に刈り取られた部分から覗く脂肪の少なそうな肉体が際立っている。一方犬を連れた女は、ボンレスハムのように絞られた白いダウンジャケットを着て、膨れた胴の下からは枝のような足が伸びていた。