about

焼け残った記憶を拾い、花を手向け弔う。その過程で生まれでたある一つの結論、ある一つの完成のかたちが、絵画だったり、物語だったりする。2017.12.18 マツウラミオ

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たとえば、ムンク

絵が人になにを「引き起こす」のかに興味がある。小学生だか中学生だか、当時美術の教科書でムンクの絵を見て衝撃を受けた記憶がある。衝撃、といっても一方的に受け取るだけのものではなく、なにかが突如自分の中に芽生え、内側から一斉に蔓を伸ばしてゆくような感覚で、それは「引き起こす」というのがいちばん近ように思う。彼の絵がそのようなものとして存在しうる要素は様々あり、たとえばねっとりとした重みのあるストロークが特徴的だが、そうした感情的で癖のある筆致もまた要素の一つにすぎないのだと、彼について知ってゆくうちに理解した。モチーフを配置したり、色彩を選択したり、絵画を完成させようとする過程で必要とされる冷静な思考は確かにあり、そこへ彼が本来からもつ悲哀や恐怖がしぜんと溶け込み、流れ出ていたのだろう。あの絵がもし、ただ感情的に殴り描きされたものであったならば、あのような、たった一枚の絵に共鳴して震えるような感覚はなかったかもしれない。

よいと感じる絵は、受動と能動を高速で行き来し、こちらの内に新しいなにかを発生させ、外へ広がる力をもたらす。

そういう絵が描けたら、といつも思う。